ドローンの国家資格が必要かどうか知りたい方のために、この資格の効力や制度の現状についてご紹介します。
国家資格の取得が必要かどうか、つまり「取得すべきか、それとも不要か」は、ドローンを飛ばす目的や用途によって異なります。
この記事では、できるだけ事実に基づいて情報をお伝えし、ご判断の材料をご提供できればと思います。
2024年11月27日に公開した記事について、データや文言を見直し、2025年7月15日に内容を更新いたしました。
1.はじめに
2022年12月の改正航空法施行によって、国家資格「無人航空機操縦者技能証明(以下、「技能証明」といいます。)」制度が導入されました。
この技能証明の効力の一つとして、「技能証明を取得すると、一部の特定飛行(人口集中地区、目視外、夜間、人または物件から30m未満)の許可承認申請が、25kg未満の機体では不要となる」点が挙げられます。
つまり、該当する飛行許可承認についての申請や、1年毎の更新申請も不要で飛行させることができます。
ただし、技能証明を取得するだけでは、許可承認申請が不要となる要件を満たせません。
さらに、飛行させる機体がメーカーによって型式認証を受けており、その上でユーザー自身が機体認証を取得することで、はじめて要件が整います。
(制度上、型式認証を受けていない機体でも、ユーザーが機体認証を取得することは可能です。ただし、取得には多くの時間や専門的な対応が必要です。)
型式認証と機体認証は、自動車の場合の、メーカーの「型式認証」とユーザーが個別に受ける「車検」に類似したものです。
また、これらには有効期限があり、技能証明は3年、機体認証は第一種が1年、第二種が3年です。結局、許可承認申請が不要となっても、こちらの更新は必要です。第一種や第二種の違いは後ほどご説明します。
なお、特定飛行のうち、空港周辺、150m以上、イベント、危険物輸送および物件投下については、リスクが高い飛行であるとして、技能証明と機体認証を取得していたとしても、許可承認申請が必要です。また、機体重量が25kg以上であれば、既にご紹介した人口集中地区等を含む全ての特定飛行で許可承認申請が必要となります。
ここまでは、技能証明と飛行許可承認申請の要否の関係を中心にしてお話ししてきました。次に、技能証明や型式認証の取得状況についてご紹介します。
2.技能証明(国家資格)の取得状況
⑴ 一等技能証明 交付数 2,970件
⑵ 二等技能証明 交付数 23,656件 以上、2025年4月30日時点
3.型式認証機の認証状況
⑴ 第一種型式認証 1型式
⑵ 第二種型式認証 7型式 以上、2025年6月24日時点
国土交通省ウェブサイト掲載資料:【型式認証を取得している無人航空機一覧】
型式認証機体数が決して多くない状況となっております。型式認証を受けた機体が増えなければ、その機体を前提としたユーザー側の機体認証の取得も進まず、制度全体の普及に影響を及ぼします。
一等、二等技能証明、第一種、第二種機体認証については、その活用区分が異なります。次でご説明します。
4.国土交通省が目指している技能証明・機体認証制度
2022年12月の改正航空法施行で国土交通省が描いた技能証明・機体認証制度は以下のとおりです。
- 一等技能証明+第一種認証機体:第三者上空の飛行(許可承認申請も必要)
- 二等技能証明+第二種認証機体:人口集中地区、目視外、夜間、人または物件から30m未満の特定飛行を許可承認申請不要で飛行(25kg未満の機体の場合)。その他の特定飛行は許可承認申請が必要。
- 技能証明のない者が特定飛行を行う場合:許可承認申請が必要。
一等操縦者技能証明を保有し、かつ第一種機体認証を受けた機体を使用する場合、第三者の上空を飛行させることができます。これは本制度の大きな特徴の一つです。
また、一等技能証明を取得すれば、二等技能証明も併せて取得したものとみなされます(改めて二等を取得する必要はありません)。
一方で、二等操縦者技能証明だけでは、第三者上空を飛行させることはできません。この場合は、飛行エリアに第三者が立ち入らないよう管理する「立入管理措置」を講じる必要があります。
5.技能証明・型式(機体)認証制度の課題
ここからは、技能証明や型式(機体)認証に関する課題について、私見も交えながらご説明します。
課題となっているのは、メーカーが申請した型式認証の機体数が極めて少ない点です。
世界シェア約70%を占めるとされるDJI社でさえ、2025年5月23日時点で、第二種型式認証を1機種取得したのみです。
型式認証機体が増えなければ、技能証明の効力は発揮できません。また、多くの特定飛行で許可承認申請が必要なままとなります。
2023年末、国土交通省は機体認証がなくても技能証明があれば飛行できるレベル3.5飛行制度を新たに導入しましたが、これは物流用途が中心です。他には被災状況の調査、行方不明者の捜索、長大なインフラの点検、河川測量などが想定されています。
※レベル3.5飛行とは:
無人地帯における目視外飛行のうち、機上カメラを活用することで、補助者や看板などの立入管理措置を必要とせず、移動車両上空の道路・鉄道などを横断する飛行が可能となる制度です。
技能証明制度が効果的に活用できていませんが、他方、国や自治体の入札案件で、ドローンを活用する役務に関し、技能証明を入札要件とするものが出始めてはいます。
また、ドローン業務を依頼するクライアントの中には、これまでの民間資格ではなく、技能証明の有無によって依頼先を選択する傾向が出てきていることはあります。
これらが、技能証明制度等をとりまく現状です。
以上を踏まえて、以下のとおりまとめます。
【技能証明取得のメリット】
- 認証機体が増えれば、人口集中地区、目視外、夜間、人または物件から30m未満の飛行許可承認申請が不要になる。 (目視外と夜間は、基本の技能証明の他に、目視内・昼間の限定変更を取得する必要あり)。
- 一等技能証明と第一種認証機体で第三者の上空飛行が可能となる(リスクの高い飛行なので、加えて飛行許可承認申請は必要。)
- 国や自治体の入札要件に対応できる可能性はあり。
- クライアントに対して、一定水準以上の操縦スキル・飛行の知識経験・航空法の知識を証明できる。
【技能証明取得のデメリット】
- 技能証明を取得しなくても、飛行許可承認を取得すれば特定飛行が可能。
- 技能証明を取得したとしても、現状では認証機体が少ないので、特定飛行のためには飛行許可承認申請をしなければならないケースが多い。
(参考)技能証明を必要とする飛行
すでにご紹介した内容と一部重複しますが、ここで改めて、技能証明が必要となる飛行を整理いたします。
- 第三者上空での特定飛行(カテゴリーⅢ)
- 一等技能証明を取得していること。
- 第一種型式認証を受けた機体を使用し、かつユーザーが機体認証を取得していること。
- 一部の特定飛行を許可承認申請なしで行う場合(人口集中地区、目視外、夜間、人または物件から30m未満)
- 二等以上の技能証明を取得していること。
- 第二種以上の型式認証機であり、かつユーザーによる機体認証が取得されていること。
- レベル3.5飛行(無人地帯における補助者なし目視外飛行)
- 二等以上の技能証明を取得していること。
- 型式認証機である必要なし。
- ただし、型式認証機(かつ機体認証取得済み)を使用していれば、上記2の要件も満たせる。
- 損害賠償保険への加入義務あり。
以上、技能証明制度の効力や現状について、事実に基づいてご紹介いたしました。

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