「資料はいらない」と言われたけど、本当に大丈夫?
2025年3月24日以降、DIPS2.0による申請では、機体および操縦者の基準適合性を証明する写真や資料の添付が不要になりました。
これは、「無人航空機の飛行に関する許可・承認の飛行許可についての審査要領(カテゴリーⅡ飛行)(以下、審査要領)」の改正によるもので、申請手続きの内容が簡素化されたことによります。
簡素化の内容と懸念点
簡素化された項目
- 機体の基準適合性
- 操縦者の基準適合性
変更の内容
改正前:基準への適合性を説明し、確認資料を添付
改正後:自己確認の上「適・否」で回答。資料添付は不要
この変更により、審査効率が向上し、審査期間の短縮が期待されます。
ただし、これは「基準が緩和された」という意味ではありません。次の点に注意が必要です。
- 申請時に省略した資料は手元に備えておくこと
- 必要に応じてすぐに提出できる体制を整えておくこと
当事務所が抱く懸念点
省略された資料は、求められた場合に提出できなければ許可取消の可能性があります。
また、どの資料が改正前に必要だったのかを把握していなければ、適合性の自己確認も困難です。
この手続き内容の簡素化は、ドローンのビジネス展開を支援する意図で行われたものですが、初めて申請を行う事業者や企業にとっては、手続き上の“ボトルネック”となる懸念もあります。
そこで、本記事では改正前に添付が求められていた資料とその備え方を明示し、初めての包括申請にあたっても適切な対応ができるようご案内いたします。
改正前の添付資料とその添付方法
改正前の添付資料とその添付方法をご紹介いたします。現在では、これらが備えておくべき資料およびその備え方となっています。
1. 機体・操縦装置の仕様等に関する情報
機体
- 設計図または写真名称(前)
- 設計図または写真名称(横)
- 設計図または写真名称(上)
操縦装置
- 設計図または写真
※メーカーの機体と操縦装置であれば、写真での対応が一般的です。
2. 機体の運用限界に関する情報
運用限界値
- 最高速度、最高到達高度等がわかる取扱説明書の該当箇所
※これらの数値は改正後も入力の必要があります。入力のために確認した取扱説明書の該当箇所が必要です。
飛行させる方法
- モード1/モード2/その他
※原則としてモード1またはモード2を記載すれば足りますが、それによらない場合や自動操縦を行う場合は取扱説明書(該当箇所を明示)が必要です。
3. 飛行形態に応じた機体の追加基準への適合性情報
人口集中地区、人または物件から30m未満の飛行
- プロペラガード等の装備写真(ホームページ掲載機で飛行形態C1を満たす場合を除く)
※プロペラガードを装着した機体写真が必要です。
夜間飛行
- 灯火の装備状況が確認できる写真
- その他を選択した場合は必要に応じて写真
※灯火が点灯している機体写真が必要です。
目視外飛行
追加基準⑴:
- カメラ等が機体に設置されていることが確認できる写真
- 映像がプロポやPCに表示されていることが確認できる写真
※自動操縦は、国土交通省が認めた自動操縦システムであることが必要です。それに該当しない多くの機体があります。その場合は、安全を確保できる代替案として説明を記載し、写真を添付します。
(代替説明案)
「機体に設置されたカメラ等により機体の外の様子を監視できる。自動操縦システムは装備していないが、補助者が常に飛行状況や周囲の状況を監視し、操縦者に必要な助言を行うことで安全を確保する。」
追加基準⑵:
- 機体の位置や異常の有無等がPC等に表示されることを確認できる写真
※プロポ等の画像で、機体の位置と警告・GPS・バッテリーなどステータス状況が表示される画面の写真です。
追加基準⑶:
- 不具合発生時の危機回避機能(フェールセーフ機能)が確認できる資料(必要に応じて)
※通常、写真の添付は不要。必要に応じて取扱説明書の該当箇所を備えておきます。
危険物の輸送
- 容器の固定方法、材料の説明
- 容器の全体写真および固定状況の写真
物件の投下
- スイッチ等の操作で投下する機構の説明
- 不用意に投下されない構造の説明
- 説明内容の機構・構造が確認できる写真
4. 操縦者の基準適合性
飛行実績の入力
飛行機 | 回転翼航空機 | 滑空機 | 飛行船 | |
総飛行時間(時間) | ||||
夜間飛行時間(時間) | ||||
目視外飛行時間(時間) | ||||
物件投下経験(回) |
※10時間以上の飛行経験に加え、申請する飛行形態ごとの実績が必要です。
5.その他のケース
- 改造機の場合:改造概要の説明
- 機体認証機で使用条件等指定書に従わない場合:逸脱内容の説明
- 25kg以上の機体の場合:機能・性能に関する基準適合性の説明
- 催し物上空の飛行:運用実績の提示
初めてDIPS2.0での包括申請を行う方は、上記内容を準備すれば対応可能と考えられます。必要なときに提出できるよう、資料の保管と整理を忘れず行いましょう。
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本記事が、初めてDIPS2.0で申請する方の一助となれば幸いです。
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