ドローン飛行の包括申請に必要な基礎知識と注意点について解説いたします。
本ページは、2023年12月1日に公開した記事ですが、規則改正等を踏まえて情報を更新、必要な文言等を追記・修正して2025年7月18日に再度公開しました。
包括申請のための基礎知識
ドローンの飛行許可を取得する際は、国土交通省が提供している「DIPS2.0(ディップスニテンゼロ)」というオンラインシステムを通じて申請を行います。
システムの操作はそれほど複雑ではないため、ご自身または自社で申請することが可能です。
許可が必要な場合と不要な場合がある
ドローンの飛行には、必ずしも許可が必要というわけではありません。
航空法で禁止されている「特定飛行」に該当する場合にのみ、許可が必要です。それ以外の飛行であれば、基本的に許可は不要です。
特定飛行の場合は許可が必要
特定飛行とは、以下に該当するものを指します。
【空域】
- 空港等周辺
- 地表または水面から150m以上
- 緊急用務空域
- 人口集中地区
【飛行方法】
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人または物件から30m未満の距離での飛行
- 催し場所上空の飛行
- 危険物の輸送
- 物件投下
これら以外の飛行であれば、原則として許可は不要ですが、いくつか例外的な規制が存在します。
航空法における「無人航空機」とは
航空法では、機体の重量によってドローンを「無人航空機」と「模型航空機」に区分しています。
- 無人航空機:機体重量が100g以上
- 模型航空機:機体重量が100g未満
先に述べた飛行許可が必要となるのは、この「無人航空機」に該当する場合です。
ただし、模型航空機であっても、以下の空域では規制が適用されます。
- 緊急用務空域
- 空港や航空管制に関わる空域
- 高高度空域
これらは無人航空機の飛行許可制度とは別の申請や通報の制度があります。
航空法以外の法律、条例による規制
ドローン飛行には、航空法以外にも以下のような法律や条例が関係します。
- 小型無人機等飛行禁止法:重要施設の周辺地域での飛行が規制されています。
- 自治体条例:公園その他の自治体管轄エリアでの飛行が規制されている場合があります。
- 道路交通法:道路上からの離発着などには道路使用許可が必要です。
- 港則法・海上交通安全法:港湾交通の妨げとなる行為に対する規制があります。
- 電波法:使用する無線通信の内容によっては、無線局の開局が必要です。
飛行許可申請に必要な操縦者の要件
飛行許可申請のためには、飛行させる操縦者が以下の要件を満たしている必要があります。
- 10時間以上の飛行経歴
- 航空法関係法令に関する知識および安全飛行に関する知識を有すること
- 飛行前確認を行う能力があること
- GPS等の機能を利用せず、安定した離陸および着陸ができること
このほか、夜間飛行・目視外飛行・物件投下の許可を取得するためには、それぞれに応じた訓練実績が必要です。
なお、民間ドローンスクールの技能認証や国家資格(操縦者技能証明)は、申請時の必須条件ではありません。
飛行許可申請前に行う手続き
飛行許可を申請するには、使用する機体を特定しておく必要があります。
そのため、申請前に次の手順を踏んでおく必要があります。
- 機体の登録
- 登録記号の機体への表示とリモートIDの搭載
2については、飛行させる前までに済ませておけば問題ありませんが、機体登録完了後であればすぐに対応できます。飛行許可申請前に完了させておくことをお勧めします。
DIPS2.0での申請における注意点
DIPS2.0では、設問形式で申請を進めていきます。その際、以下の2点が特に重要です。
- 設問で使われる用語の意味を正しく理解すること
- 選択肢を間違わずに選ぶこと
設問の用語の意味を理解する
DIPS2.0では以下のような専門用語が登場します。
- 立入管理措置
- 係留飛行
- 飛行カテゴリー(Ⅰ、ⅡA、ⅡB、Ⅲ)
特に「立入管理措置」は、許可を必要とするほとんどの飛行で必須の措置です。
「立入管理措置」と「係留飛行」については、「DIPS2.0改修内容と操作の注意点|申請実務で役立つ2つを解説」をご参照ください。
なお、飛行カテゴリーに関しては、カテゴリーⅠが特定飛行に該当しない(許可不要な)飛行、カテゴリーⅢが第三者上空を立入管理措置なしで飛行するもので、より厳しい基準が適用されます。
多くの飛行許可申請は、カテゴリーⅡAまたはⅡBに該当します。詳しくは「カテゴリーⅡAとⅡB飛行」をご確認ください。
設問の選択肢を間違えない
特に間違いやすい選択肢の項目には以下のようなものがあります。
人口集中地区や人・物件から30m未満の飛行時の追加基準
プロペラガードの装着が重要です。立入管理も必須となります。
常時プロペラガードを装着して飛行する場合は「適」を選択。
以下のようなケースは「否」を選択します。
- プロペラガードを装備せず、補助者の配置で第三者の立ち入りを管理
- プロペラガードを装備する、装備しないの両方のケースあり
いずれの場合も、立入管理を行う事が基準を満たす最低条件です。
夜間飛行の追加基準
灯火を有している、または飛行範囲が照明等で十分に照らされている場合は「適」。
ただし、灯火を有さない機体で照明だけに頼る場合は、航空局標準マニュアルでは対応が不十分となるため、独自マニュアルでの補足が必要です。
自動操縦システムの追加基準
ウェイポイント設定ができるだけで「自動操縦可能」とするのは誤りです。
自動操縦システムとして国交省が認めているものは限られています。
「否」を選んだうえで、「機体の外の様子をカメラで監視できる」「補助者が常に周囲を監視し、操縦者に助言を行う」など、安全を確保する体制を選択するケースが多いです。
危険物の輸送に適した装備の追加基準
原則「適」を選びますが、容器の固定方法や耐性に関する条件を満たす必要があります。
物件投下に関する追加基準
原則「適」を選びますが、不用意な投下を防ぐ制御機構(スイッチなど)が必要です。
DIPS2.0申請の簡素化と注意点
2025年3月より、DIPS2.0での飛行許可申請が簡素化されました。
変更点は以下のとおりです。
【簡素化された審査項目】
- 機体の基準適合性
- 操縦者の基準適合性
【変更内容】
以前:基準への適合性を説明し、確認資料を添付
現在:適合性を自己確認の上、「適・否」で回答。資料添付は不要
これにより審査効率が向上し、審査期間も短縮されました。
ただし、これは基準が緩和されたという意味ではありません。
以下の対応が引き続き求められます。
- 申請時に省略した資料は保持しておく
- 必要に応じて提出できるようにしておく
簡素化された内容について正しく理解しておかないと、申請ミスや航空法令違反の可能性があります。
国土交通省からの更なる情報発信が望まれます。
なお、当事務所のウェブサイトでも省略資料について詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
本記事が、初めてDIPS2.0で申請する方の一助となれば幸いです。
行政書士さいれんじ事務所は、個人事業主、小規模事業者を応援しています。
ドローンを取り入れた事業展開をご支援いたします。
飛行許可申請、飛行に当たっての警察署・空港等への連絡など、手続きでのお困りごとをご相談ください。
当事務所は「堂々と、正しく飛ばすお手伝い」をいたします。
事務所概要や営業時間、代表プロフィールは「事務所の概要」をご覧ください。
このウェブサイトに掲載している情報の正確性には細心の注意を払っております。しかしながら法令解釈や制度改正等で不正確な表記を含む場合があり得ます。掲載情報を用いた行為によって生じた損害には一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
