ドローンの機体登録の更新を行わないまま、更新期間が過ぎてしまった場合の対応策についてご説明します。
機体登録の更新期間とは
航空法の規定で、ドローンを屋外で飛行させるためには機体登録を行うことが義務となっています。また、登録の有効期間は3年間です。
この有効期間が過ぎた場合、屋外でドローンを飛行させることはできません。そのため、有効期間が過ぎる前に更新手続きをする必要があります。更新期間は以下のとおりです。
登録の有効期間満了日の1か月前から有効期間の満了日までの間
この期間内に更新申請が完了すれば更に3年間の有効期間を得ることができます。
機体登録の更新が必要なドローンとは
航空法上、機体の登録が義務付けられている対象機体について触れておきたいと思います。
全ての無人航空機(ただし、その重量が100g未満のもの、法第132条の2のただし書に基づきその飛行に当たって登録が免除されているもの、建物内等の屋内を飛行するものを除く。)
出典:国土交通省 無人航空機登録要領
機体重量が100g以上の無人航空機で、屋外で飛行させるものが対象です。ただし、以下は登録の適用外です。
- 航空法第132条の2のただし書きに該当するもの
- 試験飛行のため国土交通大臣への届出を行ったもの
- 二国間協定によって訪問部隊として日本国内に所在する豪・英国軍隊が、任務のため国土交通大臣への届出を行ったもの
- 離着陸場所を管理する団体が、要件に該当する飛行を団体所属の者が行うことについて、国土交通大臣に届出を行ったもの
これらは、機体の研究開発や製造過程のテスト、豪軍隊・英国軍隊、ラジコンクラブの届出という限られたケースです。
※上記は、ただし書きの内容を意訳しております。原文は「航空法第132条の2」および「同法施行規則第236条」でご確認ください。
既に登録している機体で、今後も屋外で飛行させようとするのであれば更新が必要です。
更新しなかった場合のデメリット
更新が必要なのに、更新しなかった場合のデメリットについて説明します。以下のとおりです。
- 屋外で飛行させることができなくなる。
- 取得した登録記号が失効してしまう。
- 事前登録によりリモートIDの搭載が免除されていた機体は、免除の効力が消滅してしまう。
- 特定飛行の飛行許可・承認が無効になる。
飛行許可・承認を受けていた場合は、機体の登録記号が失効しますので、お手持ちの許可承認書が使用できなくなります。業務で頻繁にドローンを飛行させている場合は、依頼を失注してしまうなど大きな機会損失となりかねません。
また、登録有効期間までに「更新申請」は完了しても、更新手続きが完了しない場合が考えられます。この場合は登録記号や事前登録のリモートID搭載免除は継続しますが、次の注意点があります。
- 更新手続きが完了するまでは、屋外で飛行させることはできない。
更新期間が過ぎてしまった場合の対応策
更新期間が過ぎてしまった場合には、ご自身(自社)の考え方などによっていくつかの対応策が考えられます。
すぐに飛行させたい場合
- 新たに機体登録を行い、新しい登録記号を取得する。
- 付与された新しい登録記号を機体に表示(貼付または記載)する。
- リモートIDを設定する。
- 特定飛行の飛行許可・承認を取り直す(※)(特定飛行をする場合)。
- 特定飛行の場合、新しい登録記号で飛行日誌を作成する(特定飛行以外の飛行日誌記載は推奨)。
登録記号は新たなものになりますので、機体への新しい登録記号の表示やリモートIDの設定等が必要です。
また、事前登録によりリモートIDの搭載が免除されていた機体であっても、更新期間が過ぎてしまってからの再登録では搭載の義務が発生します。
(※)飛行許可・承認は、2025年3月24日よりも前に取得したものは新規申請、同日以降に取得したものは変更申請です。
できるだけ早く手続きを完了するためには、本人確認を個人はマイナンバーカードで、法人はGビズIDで行うべきです。また、新たな登録の場合と更新登録の場合とで、国庫に納付する手数料の額は同じです。更新だから安いということはありません。マイナンバーカードを使うか運転免許証を使うかなど本人確認の方法と機体数での額の違いとなります。
登録記号の取扱いの決まりごと
更新しなかった(有効期限を超過し失効した)機体を再登録する場合、登録記号の取扱いについて「無人航空機登録要領 6.登録記号」に次の記載があります。
登録記号は登録更新、変更届出を行った場合には変更されないが、一度登録を抹消したもの(有効期限を超過し失効したものを含む。)を再度登録する場合は、新たに別の登録記号が割り当てられ、前と同じ登録記号を使用することはできない。
出典:国土交通省「無人航空機登録要領」より抜粋
審査日数
本人確認をマイナンバーカードで行うときの審査日数については、以下の資料を参照してください。
法人が申請するGビズIDについての記載はありませんが、法人代表者のマイナンバーカードと紐づいているGビズIDなら、審査は早くなります。

eKYCとは、免許証やパスポートを撮影し、かつご自身で自撮りする(所定の枠に顔を合わせる)認証方法です。
更新手続きは、審査の後、手数料納付をもって完了となります。
手数料
上記の表では、手数料についての全体像が見えません。手続きをすべて郵送で行う場合や、GビズIDを利用した場合の手数料などは、以下をご覧ください
申請方法 | 本人確認方法 | 1機目 | 2機目以降※ |
オンライン | ①マイナンバーカードに記録された電子証明書を送信する方法 | 900円 | 890円/機 |
②GビズIDのアカウントにログインする方法 | 1,450円 | 1,050円/機 | |
③運転免許証又はパスポート及び顔面の画像データを用いた顔認証を実施する方法 | 1,450円 | 1,050円/機 | |
④本人確認書類を郵送する方法 | 1,450円 | 1,050円/機 | |
郵送 | ④本人確認書類を郵送する方法 | 2,400円 | 2,000円/機 |
出典:国土交通省「無人航空機登録要領」より抜粋。
当面飛行させる予定はないが、いずれかの時期に飛行させる場合
更新期間が過ぎてしまった場合は、屋外で飛行させることはNGです。
当面飛行させる予定がないのであれば、次回飛行させる前までに、上記の「すぐに飛行させたい場合」で説明した手続きをとることになります。特定飛行を行う場合には許可・承認申請も必要ですので、計画的に手続きを進めることが肝要です。
今後は機体を使用するつもりがない場合
新しく買った機体だけ使用している、古くなった機体は使用せず売却や譲渡をしようか考えている、実はロストしたまま見つからないなど、取り扱いが不明で困っていることがあるかもしれません。
ここで重要なのは、その機体が抹消手続きを行わなければならない状態になってなっていないか?ということです。以下については、登録が失効しないうち、つまり更新期間が過ぎる前に済ませておく内容です。
登録が失効する前に、抹消手続きを行わなければならない状態ではありませんか?
登録抹消は、航空法で次のとおり定められています。
(登録の抹消)
出典:航空法第132条の11
第132条の11 登録無人航空機の所有者は、次に掲げる場合には、その事由があつた日から15日以内に、その登録の抹消の申請をしなければならない。
一 登録無人航空機が滅失し、又は登録無人航空機の解体(整備、改造、輸送又は保管のためにする解体を除く。)をしたとき。
二 登録無人航空機の存否が2箇月間不明になつたとき。
三 登録無人航空機が無人航空機でなくなつたとき。
2 国土交通大臣は、前項の申請があつたとき、第132条の6第1項の規定により登録がその効力を失つたとき、又は前条の規定により登録を取り消したときは、当該登録を抹消し、その旨を所有者に通知しなければならない。
機体を解体したり、ロストして2か月間行方がわからないなど抹消事由に該当するときは、放置せず、15日以内に登録抹消の申請をしなければならないことに注意が必要です。詳細は「ドローンの登録抹消申請」のページをご参照ください。
譲渡や売却を考えている場合
もう使うことはないので譲渡や売却をしたいとお考えの場合もあると思います。
航空法の登録抹消条文には、譲渡や売却について記載がありませんが、無人航空機登録要領で「無人航空機を売却する等の理由により、登録を抹消したい場合についても抹消の登録を行うことができる。」とされています。
譲渡について
例えば友人に譲渡するために登録記号はそのまま引き継ぎたいとのお考えなら、登録抹消をせず、更新期間が過ぎる前に譲渡手続きを行います。DIPS2.0の「無人航空機登録申請メインメニュー」-「その他の手続き」-「所有機体の譲渡」で所有権を移転させます。譲渡する相手のログインID、氏名、メールアドレスが必要です。
アプリやリモートIDの紐づけを解除する必要もあります。
登録記号を引き継ぐ必要がないなら、以下に記載の売却と同じ手続きです。
売却について
売却の場合、機体登録の抹消申請を行うのが一般的です。抹消してから売却をしないと、所有者がご自身(自社)のままになってしまいます。譲渡のときと同じように、アプリやリモートIDの紐づけも解除する必要があります。登録抹消については、「ドローンの登録抹消申請」のページをご参照ください。
更新をしなかった場合、登録抹消されるのか?失効と抹消の関係
次に、ロストしていないし機体は手元にあるものの、例えば、新しい機体だけ使用しているので、古い機体は更新せず有効期間が経過してしまった等の話です。
航空法第132条の6第1項の規定により、「更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う」とされています(その期間とは登録から3年間です)。
先述しました「登録の抹消」についての航空法条文(第132条の11第2項)に、更新しないで効力を失ったときの抹消について記載がありました。以下に該当箇所を太字にして再掲します。
国土交通大臣は、
前項の申請があつたとき、(注:滅失・解体、ロストなどを理由に抹消申請があったとき)
第132条の6第1項の規定により登録がその効力を失つたとき、 (注:登録更新を受けずに効力を失ったとき)
又は前条の規定により登録を取り消したとき (注:命令違反や不正のため登録を取り消したとき)
は、当該登録を抹消し、その旨を所有者に通知しなければならない。
出典:航空法第132条の11第2項より引用の上、当方により注釈を挿入
登録無人航空機は、国土交通省によって「無人航空機登録原簿」に登録されています。登録失効となった機体は、国土交通大臣によってこの原簿から当該機体が抹消されます。効力を失ったときには抹消されることが条文で規定されています。
法令および公的に公開されている情報に基づいてご説明いたしましたが、これらがDIPS2.0における具体的な動作仕様にどのように反映されるかについては、当事務所では把握しておりません。あらかじめご了承ください。
専門知識でサポート、初回ご相談は無料
ドローンの飛行許可申請、機体登録の更新、登録講習機関の登録に関するお悩みやご依頼は、下記の連絡先までお気軽にお問い合わせください。当事務所が許可申請・登録を代行して、ドローン業務をサポートいたします。
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