「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」の改正点

「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」の改正点

改正箇所はどこか?新旧の違いを明示します。

「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」は、航空法で規定されている無人航空機を飛行させる場合のさまざまな規制を、法律では詳細に触れていない実務・運用面の具体的な解釈が示されています。

2024年6月10日付でこの解釈文書の改正がありました。

本ページでは、国土交通省ウェブサイトで削除されてしまった改正前のものと、改正されて新しく掲載されたものとを並記して新旧対照表を作りましたのでご紹介いたします。

新旧対照表をご紹介する前に、改正された箇所を抜粋列記しています。どこが変わったのか、追加されたのか、ウェブサイト上では改正前のものがないので調べようがないと思われた方に、これを読んで参考にしていただければと思います。

そもそも国土交通省のウェブサイトでは、この資料がどこにあるのか見つけにくかったと思います。

現在(2024年6月時点)はドローンユーザーにとってはおなじみの「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」のページトップに「主なトピックス」として掲載されています。

国土交通省ウェブサイト「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」トップページ
国土交通省ウェブサイト「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」トップページ
出典:国土交通省ウェブサイト「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」トップページ抜粋

国土交通省ウェブサイトの該当箇所は「無人航空機に係る規制の運用における解釈につい」です(クリックすると別ウインドウに遷移します)。

改正された箇所の紹介

全体を通した用語の変更

細かなことですが、解釈文書で随所に使用されていた「無人航空機を飛行させる者」が「操縦者」に用語変更されています。

飛行前の経路下の確認

飛行前に空域や周囲の状況を確認することになっていますが、「飛行経路下に第三者がいないことの確認」とのみ記載されていたものが、「飛行経路直下及びその周辺の落下分散範囲に第三者がいないことを確認」すべきと詳細に明記されました。

直下だけでは足りず、周辺の落下分散範囲までが飛行経路下であるとのこと。

2023年9月12日に開催された「カテゴリーⅡ(レベル3) 飛行の許可・承認申請に関する説明会」で、国交省から以下の資料が示されていました。「飛行経路下」についての解釈もこの説明会の質疑応答で国交省が回答しています。
※リンクを貼った↑上の説明会の資料の後半は質疑応答の議事録がついていますので宜しければご確認ください。

カテゴリ―Ⅱ(レベル3)飛行の許可・承認申請に関する説明会資料
出典:国土交通省「カテゴリ―Ⅱ(レベル3)飛行の許可・承認申請に関する説明会資料」

飛行前の風速の確認

また、飛行前の気象の確認に関しては、「風速が運用限界の範囲内であることの確認」だったものが、「離着陸場所の地上風及び飛行経路上の各高度帯における風向風速変動を確認すること」と明記されています。

「風速の確認」は、風速計で離着陸場所の地上風を確認するだけでなく、飛行させる高度の風向き、風速の変動を確認するということです。
飛行高度での風向風速は、機体・制御装置やモニターによって把握できるものもありますが、把握できないものもあります。
しかし、ここで大事なことは、飛行高度での風向風速を機体・制御装置やモニターによって把握できるものであっても、「飛行前」にこの確認を行うことが必要だということです。
この「風速の確認」は、「飛行に必要な準備が整っていることの確認」についてのことです。

風速の確認については以下のページをご参照ください。

目視内飛行の定義

目視内、目視外については従前から記載されていますが、特に目視の範囲について、より具体的に示されました。

安全な飛行を行うためにバッテリー残量を確認する目的等でドローンから一時的に目を離し、モニターを確認する等は目視飛行の範囲内であると明記されています。

これは2023年9月12日に開催された「カテゴリーⅡ(レベル3) 飛行の許可・承認申請に関する説明会」での質疑応答で国交省が回答した内容が、この解釈資料でも再掲されたものです。
説明会での質疑応答では、目視外についても補足されています。

質問
目視外の定義について、モニターを確認するため機体から目を離した場合は目視外となるのか。
回答
目視内での飛行にあたっては、操縦者が機体及びその周囲の状況を目視により確認することが必要となりますが、安全飛行するためにバッテリー残量を確認する程度のモニターの確認は目視内の範疇であると認識しております。ただし、モニターを凝視する等により、機体から目を離した場合は目視外となります。

この目視外の箇所については、今回の解釈文書では、従前の「モニターを活用して見ること」から「飛行状況を専らモニターを用いて見ること」に修正されました。

イベント上空の飛行の詳述

想定して いない多数の者の集合する催しが開催されることが判明し、第三者の立ち入りやその可能性がある場合の措置が追記されました。飛行の停止や、飛行経路の変更などの必要な措置を講じることとされています。

イベント(催し)の具体例も従前よりも増えました。ドローンショー花火大会マラソン街頭パレード選挙等における屋外演説会が追記されました。

また、直接・間接的に関与する人のみの参加で行うイベントは該当しないことも追記となっています。

物件投下への追記

対象物件を地表等に落下させることなく地上の人員に受け渡す行為」は物件投下に当たらないことが明記されました。

物資配送などの実態に合わせて記載されたものと思います。

立入管理措置への追記

立入管理区画の設定に当たって、飛行させるドローンの「落下分散範囲も考慮しなければならない」ことが追記となっています。
また、審査要領に基づき、機体に取り付けられた「カメラを活用して補助者を配置せずに目視外飛行を行う場合、カメラによる第三者の立ち入り確認をもって、立入管理措置が行われたものとみなす」ことが追加されています。これはレベル3.5飛行のことです。

2023年12月26日付改正、同年12月27日に国交省ウェブサイトに掲載された「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」において、レベル3.5飛行の場合は、機体に取り付けられたカメラにより第三者の立ち入りが無いことを確認することで立入管理措置とみなされることとなりました。

この「みなす」解釈は航空法上で重要です。
航空法第132条の85において、「立入管理措置を講ずることなく無人航空機を飛行させるときは、一等無人航空機操縦士の技能証明を受けた者が第一種機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合に限る。」とされています。
航空法を改正することなく、つまり条文との整合性をとるためには、カテゴリーⅢではないレベル3.5飛行は、立入管理措置が行われていなければならないからです。

間接関与者の例示

第三者に該当しない間接関与者の例示が行われています。
映画の空撮における俳優やスタッフ、学校等での人文字の空撮における生徒等」と記載されました。

第三者上空の解釈の新設

これは解釈文書に新たに設けられたものです。
前述の「カテゴリーⅡ(レベル3)飛行の許可・承認に関する説明会」における質疑応答での国交省回答や、「レベル3.5創設」を踏まえて明文化したものと思います。


第三者上空には「第三者が乗り込んでいる移動中の車両等の上空を含む」と記載されました。

また、「上空」とはドローンの「落下距離(飛行範囲の外周から製造者等が保証した落下距離)を踏まえ、落下する可能性のある領域に第三者が存在する場合」は、「第三者の上空であるものとみなす」と記載されています。

他方、第三者上空にあるとはみなさないものも明記されています。
「第三者が遮蔽物に覆われ」ており、ドローンが「衝突しても遮蔽物で第三者が保護されている場合(第三者が屋内や停止中の車両等の内部にある場合等。)
第三者が移動中の車両等(ドローンが衝突しても遮蔽物で第三者が保護される状態にある場合に限る。)の中にある場合であって、レベル3.5飛行として一時的に当該移動中の車両等の上空を飛行するとき
ただし、遮蔽物に覆われず、保護されない状況になった場合は対象外。人が車両から出てきた場合やバイク運転は対象外です。

レベル3.5飛行では、ドローンが一時的に移動中の車両等の上空を横断する場合(遮蔽物に覆われず、保護されない状況になった場合を除き)、特定飛行中のドローンの下に人の立入又はそのおそれのあることを確認したときに該当しないとしています。

補助者についての追記

補助者の役割として、ドローンの「飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視すること」が付け加えられています。

捜索・救助の特例への追記

航空法132条の92は捜索・救助の特例について規定されています。これに関して「緊急性がある飛行」が対象であると追記されました。
緊急性は、「飛行の許可・承認申請の対応窓口への申請を行う手段又はいとまがない状況」を指すものであることが補足されています。

航空法132条の92の特例の該当者は、国・地方公共団体または国・地方公共団体の依頼により捜索又は救助を行う者です。

さて、それでは新旧対照表にしてご紹介します。「改正後」の欄のうち朱書きにしたところが変更・追記された改正箇所です。新旧対照表は膨大なボリュームですので、スマホの方は読みにくいと思います。できればPCやタブレット端末でご覧いただくことをお勧めいたします。

出典:国土交通省「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」(令和6年6月10日最終改正版)および(令和5年1月26日最終改正版)

今回の改正は、それまでの「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」を作成した以降に対外公表したものや、制度改正を踏まえたものが反映されています。

また、催し場所上空の判断や、物流での受け渡し方法、能登半島地震対応を踏まえたと思われる捜索救助の緊急性の判断など、国交省が行政運営をしていく中で明確にしておくべきと考えた中身も反映されたものだと認識しています。

改正

このウェブサイトに掲載している情報の正確性には細心の注意を払っております。しかしながら法令解釈や制度改正等で不正確な表記を含む場合があり得ます。掲載情報を用いた行為によって生じた損害には一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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