登録講習機関の登録要件の1つである講師条件については、これまで認められていた経過措置が今後撤廃され、一定の期間を経た後に本則のみが適用されることとなります。「一定の期間」は新たな経過措置として設けられます。
ドローンの登録講習機関における講師条件として、HP掲載講習団体の講師経験は要件に適用できなくなってくる
2025年1月29日に「登録講習機関の登録に関する取扱要領」の一部改正(国空無機第84692号)が交付されました。
「国土交通省HP掲載講習団体の講師経験」を講師条件とする経過措置は、この取扱要領の附則に書かれているのですが、回転翼航空機(マルチローター)については、これが撤廃されます。
ただし、附則の改正規定の施行日(2025年12月6日)と同時に撤廃されるわけではありません。新たな経過措置が設けられ、一定の期間を経てからなくなるということです。
登録講習機関で講習を行う講師条件の一つであった「回転翼航空機(マルチローター)についての国土交通省HP掲載講習団体の講師経験」は、登録講習機関の登録の有効期間満了日がいつであるかによって、いつまで講師条件として適用できるのかが変わります。
また、新たに登録講習機関の登録を行う場合は、登録申請の日がいつであるかによって変わります。
公布された「登録講習機関の登録に関する取扱要領」の一部改正(国空無機第84692号)の内容を読んで分かったことを、ここでは意訳・省略しながらお話しして参ります。正式な記載内容については国土交通省ウェブサイト等でご確認をお願いいたします。
1.改正の概要
今回の改正の主たる内容は、附則の改正により回転翼航空機(マルチローター)に係る暫定措置が撤廃されるということです。
暫定措置とは、附則で認めていた「国土交通省HP掲載講習団体の講師経験」を回転翼航空機(マルチローター)における講師条件として適用させることです。以下では、暫定措置と呼ぶことにします。
これを漸次なくしていくことになっています。
附則の改正規定は2025年12月6日に施行されます。そして漸次なくしていく方法は以下のとおりです。
【既に登録済みの登録講習機関の場合】
- 現在の登録の有効期間(3年間)の満了日までは、改正前の規定(暫定措置)を適用
- ただし、施行日(2025年12月6日)から登録の有効期間(3年間)満了日までの期間が1年未満の場合は、2回目の更新前まで改正前の規定を適用
【未登録の登録講習機関の場合】
- 施行日より前に登録申請を行い、施行日以後に登録を受けたものは、3年後の更新前まで改正前の規定を適用
この内容にあるとおり、附則の改正規定の施行によって、新たな経過措置が設けられることとなります。
暫定措置は漸次なくしていくことになり、その結果「最終的」には、「登録講習機関の登録に関する取扱要領」の本則での講師条件のみが有効となります。本則とは、つまり、無人航空機操縦士の技能証明を取得した後、一定の飛行経験を有する者のみが、講師条件を満たすことになります。
改正前、改正後の「登録講習機関の登録に関する取扱要領」の本則および附則(経過措置)該当箇所は、本ページの下部に引用掲載しています。
2.改正となった経緯
国土交通省は、この改正についてのパブリックコメント(意見公募)の際に、暫定措置を撤廃することとした経緯について触れています(クリック後、別ウインドウに遷移します)。
ポイントを要約・列記しますと以下になるかと思います。
- 通達制定当初は技能証明を有する者がいないことから、経過措置として、HP講習団体等での講師経験があり、飛行経験・実績があれば要件を満たすこととしていた。
- 制度開始から一定期間が経過したこともあり、技能証明を用いて講師要件を充足することができる者が増えてきたことを踏まえ、航空法の技能証明に基づいた規定に移行させていくため、回転翼航空機(マルチローター)に係る暫定措置を撤廃する。
3.HP掲載講習団体の講師経験で講師となっている場合はどうしたらいいか?
すでに登録済みの登録講習機関において、HP掲載講習団体の講師経験で講師条件を満たした講師については、前述のとおり登録講習機関の登録の有効期間満了日によって対応の方法が変わってきます。
もう少し具体的に見て参ります。
登録の有効期間満了日がいつであるかがポイントです。
なお、登録講習機関の登録は、航空法および同法施行令によって有効期間である3年毎に更新することとなっております。
2022年12月5日までに登録講習機関の登録を受けている場合
2022年12月5日に改正航空法が施行され無人航空機操縦者技能証明申請が開始(技能証明申請者番号は同年11月7日から発行)されましたが、登録講習機関の登録申請の受付は、それに先んじて同年9月5日から開始されています。
したがって、2022年12月5日までに登録済みの登録講習機関が存在します。
- 登録の有効期間(3年間)の満了日は2025年12月4日以前であり、附則改正施行日(2025年12月6日)の前に更新するため、HP掲載講習団体の講師経験(暫定措置)で登録講習機関の最初の更新をすることが可能。
- 更新後、次の有効期間満了日までに、講師は講習を行うために相応する技能証明を取得、かつ取得後、一等は1年、二等は6か月の飛行経験があることが必要。
2023年12月5日までに登録講習機関の登録を受けている場合
2023年12月5日までに登録を受けている場合、登録の有効期間は2026年12月4日以前に迎えることとなります。
附則の改正規定施行日(2025年12月6日)から登録の有効期間満了日までの期間が1年未満ですので、有効期間後の更新は改正前の規定(暫定措置)が適用されます。
- 施行日(2025年12月6日)から登録の有効期間満了日までの期間が1年に満たないため、有効期間後、改正前の規定(暫定措置)で登録講習機関の最初の更新をすることが可能。
- 更新後、次の有効期間満了日までに、講師は講習を行うために相応する技能証明を取得、かつ取得後、一等は1年、二等は6か月の飛行経験があることが必要。
2023年12月6日以降に登録講習機関の登録を受けている場合
2023年12月6日以降に登録を受けている場合、登録の有効期間は2026年12月5日以降となります。
附則の改正規定施行日(2025年12月6日)から登録の有効期間満了日までの期間が1年以上ありますので、有効期間後の更新は改正後の規定が適用されます。暫定措置は使えません。
- 施行日(2025年12月6日)から登録の有効期間満了日までの期間が1年以上のため、講師は講習を行うために相応する技能証明を取得、かつ取得後、一等は1年、二等は6か月の飛行経験があることを要件として最初の更新をすることが必要。
(留意点)登録講習機関の登録の有効期間の起算日は、講習開始日のことではない
登録の有効期間については、講習開始日から3年後と思わないようにすることが大切です。起算点は登録日です。登録講習機関の登録の際に郵送で届いた「登録講習機関 登録証」に記載されている「登録年月日」からの3年間が有効期間です。
4.新規の登録講習機関の登録申請をする場合
ここまでは、「登録講習機関の登録に関する取扱要領」の一部改正が公布された2025年1月29日までに登録を行っている登録講習機関について見て参りました。
ここからは、2025年1月29日以降に登録講習機関の申請をした場合についてはどうなるか見ていきます。
これについては、申請日が附則の改正規定施行日(2025年12月6日)の前なのか、後なのかによって対応が変わります。現在、HP掲載講習団体の方で、これから登録講習機関になろうとお考えの方にとって特に重要です。
施行日(2025年12月6日)より前に登録申請を行う場合
このケースは、申請時点において暫定措置は撤廃されていない状況下です。
- 申請時点では暫定措置が撤廃されていないため、HP掲載講習団体の講師経験で登録講習機関の登録をすることが可能。
- 3年後の更新までに、講師は講習を行うために相応する技能証明を取得、かつ取得後、一等は1年、二等は6か月の飛行経験があることが必要。
この場合、注意点があります。
登録申請は、DIPSで申請をした後、申請に必要な添付書類を国土交通省にメールで送付しますが、添付書類に不備があって国土交通省から修正指示がきた場合は、修正し「再申請」を行うこととなります。
この場合、再申請を行った日が申請日になってしまいますので、施行日間近の申請は避けるべきです。
なお、申請時点で、技能証明かつ飛行経験があるという要件を満たした上で申請することももちろん可能です。
施行日(2025年12月6日)以降に登録申請を行う場合
このケースは、申請時点において暫定措置は撤廃されており、かつ改正後の経過措置にも該当しません。
- 申請の時点で、講師は講習を行うために相応する技能証明を取得、かつ取得後、一等は1年、二等は6か月の飛行経験があることが必要。
5.技能証明取得後の飛行経験に要する期間に注意
講習を行うために相応する技能証明を取得、かつ取得後、一等は1年、二等は6か月の飛行経験があることが必要ということについて、もう少し具体的に見て参ります。
- 一等の講習を行うための登録講習機関の講師は、一等無人航空機操縦士の技能証明を取得 かつ 技能証明を受けた後1年以上ドローンを飛行させた経験を有する必要があります。
- 二等の講習を行うための登録講習機関の講師は、二等無人航空機操縦士の技能証明を取得 かつ 技能証明を受けた後6か月以上ドローンを飛行させた経験を有する必要があります。
- つまり技能証明を取得しているだけでは講師条件を満たさず、必要となる登録申請や更新申請を行う日の遅くとも一等は1年前までに、二等は6か月前までに技能証明を取得しておいて、直ちに飛行の経験を積んだ上で要件を満たしておかなければなりません。
また、これらについては、当該講師が行う講習に対応したドローンの種類及び飛行の方法について限定がされていない技能証明を有している必要があります。
つまり25kg未満の限定変更、昼間、目視の限定変更について講習を行う場合は、それぞれの限定変更を取得して、かつ飛行経験を有していることが要件です。
更に付言しますと、無人航空機操縦者技能証明は、手続きを経て技能証明取得者として登録されるまでにタイムラグが生じる点にも注意が必要です。タイムラグ期間は変動しているので明確にはお伝えできません。
6.申請手続きの開始時期も考慮する
申請は要件を満たしてから行えるものです。講師条件を満たさないうちに申請を行うことはできません。
また、登録の申請は、登録を受けようとする日の少なくとも1月前を目処とされています。
更新の申請は、有効期間の満了日の前日の1ヶ月前から有効期間の満了日までの間に行うのが基本です。これにより満了日の翌日から更新されます(これ以外の申請の場合、更新手続きが完了した日から起算されます)。
すなわち、登録または更新の約1か月前から申請を行うので、それまでに要件を満たしておくことも考慮しておかなければなりません。
7.登録更新講習機関の登録を行う場合は、速やかに技能証明取得を
「登録講習機関の登録に関する取扱要領」の一部改正が交付された2025年1月29日には、登録「更新」講習機関の制度はまだ整備されていません。ただしパブリックコメント(意見公募)は済んでいます。
パブリックコメントを見る限りでは、登録講習機関の制度創設当初のような「HP掲載講習団体の講師経験」が無人航空機(マルチローター)の講師条件として適用されることはなさそうです。技能証明と技能証明取得後の飛行経験のみが講師条件となる案となっていました(回転翼航空機(ヘリコプター)と飛行機については経過措置はあります)。
このことから、登録講習機関の登録や更新だけでなく、登録更新講習機関の登録も早期に目指す場合には、ここまで説明してきたものを覆すような話ですが、速やかに技能証明を取得する必要があります。パブコメ案で示された講師条件が変更なく施行された場合です。
8.登録講習機関の講師が技能証明を取る方法
HP掲載講習団体の講師経験で登録講習機関の講師になっている方が、技能証明を取得するためには、以下の方法が考えられます。
- 指定試験機関で学科・実地試験を受験
- 他社の登録講習機関で講習受講、修了審査を受ける(学科試験は指定試験機関)
- 自社の登録講習機関で講習受講、修了審査を受ける(学科試験は指定試験機関)
本件については、国土交通省ウェブサイトに以下のFAQがありますので参考にしてください。
Q 登録講習機関の講師が自社の講習を通常通り受講し、自社の修了審査を受けることは可能か。 また、その場合には各等級の学科・実技のカリキュラムを全て受けなければならないのか、それとも省略することが可能か。
A 自分自身が修了審査員になって自分で飛行させてそれを自己審査(自己採点)することは認められませんが、自分自身の登録講習機関で講習を受講し(他の方が講師を行う)、修了証明書を取得することは可能です。
ただし、当然のことですが、関係者だからといって講習時間を勝手に減免したり修了審査で甘く採点したりすることは許されません。
その他の取得の方法としては次の2つがあります。
<1つ目>
自身の登録講習機関以外で講習を受講頂く。
<2つ目>
登録講習機関に通わず、直接指定試験機関の学科試験に合格した後、指定試験機関が行う実地試験を受けて頂く。
なお、カリキュラムは省略することはできません。経験者向けの講習を受講いただくものと思慮します。
※省略する場合は、指定試験機関が実施している学科試験および実地試験を受講願います。
出典:国土交通省ウェブサイト-「無人航空機操縦者技能証明等」-「3.登録講習機関」-FAQから抜粋
9.「登録講習機関の登録に関する取扱要領」の該当箇所
改正前の講師条件についての本則と附則(経過措置)
改正前の「登録講習機関の登録に関する取扱要領」に記載されている講師条件についての「本則」と附則の「経過措置」は次のとおりです。
本則
一等の講習を行うための登録講習機関
イ.一等無人航空機操縦士の技能証明(当該講師等が講習を行う無人航空機の飛行の方法及び無人航空機の種類について限定がされていないものに限る。)を有する者であって当該技能証明を受けた後1年以上無人航空機を飛行させた経験を有する。
ロ.前号と同等以上の能力を有する。
二等の講習を行うための登録講習機関
イ.二等無人航空機操縦士の技能証明(当該講師等が講習を行う無人航空機の飛行の方法及び無人航空機の種類について限定がされていないものに限る。)を有する者であって当該技能証明を受けた後6月以上無人航空機を飛行させた経験を有する。
ロ.前号と同等以上の能力を有する。
※上記は撤廃措置に関係する箇所を抜粋しています。講師条件としては、これらのほか、18歳以上であること等もありますので、ご留意ください。
附則(経過措置)
一等の講習を行うための登録講習機関
一等無人航空機操縦士の講習を行うための登録講習機関における講師の条件ロについては、当面の間、国土交通省航空局ホームページに掲載されている無人航空機の操縦者に対する講習等を実施する団体(以下「HP掲載講習団体」という。)等での1年以上の講師の経験があり、直近2年間で1年以上の飛行経験かつ100時間以上の飛行実績を有することとする。
二等の講習を行うための登録講習機関
二等無人航空機操縦士の講習を行うための登録講習機関における講師の条件ロについては、当面の間、HP掲載講習団体等での6月以上の講師の経験があり、直近2年間で6月以上の飛行経験かつ50時間以上の飛行実績を有することとする。
出典:国土交通省「登録講習機関の登録等に関する取扱要領(国空無機第233628号)」から該当箇所を抜粋。
改正後の講師条件についての本則と附則(経過措置)
改正後の「登録講習機関の登録に関する取扱要領」に記載の本則該当箇所は、少し表記が変更されています。以下のとおりです。
本則
※1 下表の「無人航空機の飛行の方法について限定がされていないもの」については、「当該講師等が行う講習に対応した無人航空機の種類及び飛行の方法について限定がされていないもの」とする。
※2 下表の「無人航空機を飛行させた経験」については、該当する技能証明を取得後のものとする。
一等の講習を行うための登録講習機関
イ.一等無人航空機操縦士の技能証明(無人航空機の飛行の方法について限定がされていないものに限る。)を有する者であって1年以上無人航空機を飛行させた経験を有する。
ロ.前号と同等以上の能力を有する。
二等の講習を行うための登録講習機関
イ.二等無人航空機操縦士の技能証明(無人航空機の飛行の方法について限定がされていないものに限る。)を有する者であって6月以上無人航空機を飛行させた経験を有する。
ロ.前号と同等以上の能力を有する。
附則(経過措置)
一等の講習を行うための登録講習機関
一等無人航空機操縦士の講習を行うための登録講習機関における講師の条件ロ(回転翼航空機(ヘリコプター)又は飛行機に関する講習を行う講師に係るものに限る。)については、当面の間、国土交通省航空局ホームページに掲載されている無人航空機の操縦者に対する講習等を実施する団体(以下「HP掲載講習団体」という。)等での1年以上の講師の経験があり、直近2年間で1年以上の飛行経験かつ100時間以上の飛行実績を有することとする。
二等の講習を行うための登録講習機関
二等無人航空機操縦士の講習を行うための登録講習機関における講師の条件ロ(回転翼航空機(ヘリコプター)又は飛行機に関する講習を行う講師に係るものに限る。)については、当面の間、HP掲載講習団体等での6月以上の講師の経験があり、直近2年間で6月以上の飛行経験かつ50時間以上の飛行実績を有することとする。
(施行期日)
第1条 この要領は、公布の日から施行する。ただし、附則の改正規定については、令和7年12月6日から施行する。
(経過措置)
第3条 この要領の附則の改正規定の施行の際現に登録を受けている登録講習機関及びこの要領の附則の改正規定の施行前にした登録の申請に基づきこの要領の附則の改正規定の施行後に登録を受けた登録講習機関については、当該登録の有効期間の満了日(この要領の附則の改正規定の施行日から登録の有効期間の満了日までの期間が1年に満たない場合には、当該登録の有効期間の満了日の次に到来する有効期間の満了日)までの間は、なお改正前の規定によることができる。
出典:国土交通省「登録講習機関の登録等に関する取扱要領(国空無機第84692号)」から該当箇所を抜粋。
10.登録講習機関(マルチ)の講師条件の経過措置撤廃の期限について(解説資料)
国土交通省のウェブサイトには、「登録講習機関の登録等に関する取扱要領」のほかに、「登録講習機関(マルチ)の講師条件の経過措置撤廃の期限について(解説資料)」という、事例を基にした資料が掲載されています。参考になさってください(クリック後、別ウインドウに遷移します)。
このウェブサイトに掲載している情報の正確性には細心の注意を払っております。しかしながら法令解釈や制度改正等で不正確な表記を含む場合があり得ます。掲載情報を用いた行為によって生じた損害には一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

行政書士さいれんじ事務所はドローン飛行許可申請を代行しています。
ドローン飛行について、社内で航空法の遵守内容の周知・浸透が難しいことがあります。当事務所では、ドローン飛行における法令遵守の勉強会にお邪魔してお話しをさせていただいております。このページに記載しました内容でご不明なところがございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
事務所概要や営業時間、代表プロフィールは「事務所案内」をご覧ください。