緊急用務空域をわかりやすく解説 - 行政書士さいれんじ事務所

緊急用務を行う消防防災ヘリなどが飛行する空域を国土交通省が「緊急用務空域」に指定した場合は、指定空域でのドローンの飛行が原則禁止となります。
ドローンを飛行させる人は、飛行開始前に緊急用務空域に指定された場所で飛ばすことのないよう該当の有無を確認する義務があります。

緊急用務空域を指定することになった経緯

2021年2月、栃木県足利市にある両崖山(りょうがいさん)で山林火災が発生し消火活動が行われた際、ドローンの飛行が目撃されたため消防防災ヘリの活動が一時中断するという事態が発生しました。

そのため国土交通省は、消防、救助、警察活動などの緊急用務を行うヘリなどの航空機の飛行の安全を確保するため航空法施行規則(省令)を改正し、緊急用務空域を指定することで原則ドローン等の飛行を禁止する新たな飛行禁止空域を設けました。同年6月1日付で施行されています。

飛行禁止への緊急用務空域の追加の資料
出典:国土交通省ウェブサイト「無人航空機の飛行禁止空域の追加について」

緊急用務空域の指定のタイミングと指定の確認方法

緊急用務空域の指定は「令和〇年度緊急用務空域 公示第〇号」という形で公表されます。また、指定の解除も予めの予告はありません。

ドローンを飛行させる側は、どのように指定の有無を確認をすればよいのでしょう?情報元を見にいくしかないのですが、その方法は2つです。

① 国土交通省ウェブサイトの「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」のページ冒頭に表示されますので、それで確認します。

② X(旧Twitter)の「国土交通省航空局 無人航空機」にポストされますのでそれを確認します。

民間が開発したウェブ版の飛行日誌には、飛行前の事前確認の一覧にあるこの項目をクリックすれば①が表示される仕組みのものもあります。

飛行の際の事前確認義務項目の一つとなっています。怠った場合は50万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。

航空法第132条の86 無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。
二 国土交通省令で定めるところにより、当該無人航空機が飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整つていることを確認した後において飛行させること。

航空法施行規則第236条の77 法第132条の86第1項第2号の規定により無人航空機を飛行させる者が確認しなければならない事項は、次に掲げるものとする。
一 当該無人航空機の状況
二 当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況
三 当該飛行に必要な気象情報
四 燃料の搭載量又はバッテリーの残量
五 リモートID機能の作動状況(第二百三十六条の六第二項各号に該当する飛行を行う場合を除く。)

航空法第157条の9 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処する。
十二 第132条の86第1項第2号又は第3号の規定に違反して、無人航空機を飛行させたとき。

国土交通省ウェブサイトの表示例(緊急用務空域の指定なし)

国土交通省ウェブサイトに表示される緊急用務空域の指定
出典:国土交通省ウェブサイト「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」から抜粋

国土交通省ウェブサイトの表示例(緊急用務空域の指定あり)

国土交通省ウェブサイトに表示される緊急用務空域の指定(指定あり)
出典:国土交通省ウェブサイト「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」から抜粋

飛行許可書があっても飛ばせない? 禁止の対象となるドローンとは?

空港等周辺、150m以上、DIDなどの禁止空域の飛行許可書を取得していても、緊急用務空域として指定された場所では原則飛行禁止です。

また、航空法では機体重量100g以上のドローンが無人航空機に該当しますが、緊急用務空域では100g未満の模型航空機も飛行禁止の対象です。(航空法施行規則第239条の2第1項)
更にいえば、気球、凧、ハンググライダーおよびパラグライダーの浮揚・飛行も禁止の対象となっています。

緊急用務空域でドローンを飛ばすことができる者

緊急用務空域では誰一人、ドローンを飛ばすことはできないのでしょうか?
航空法第132条の92および同法施行規則第236条の88および第236条の89では例外規定を設けています。それによりますと次の者が捜索または救助を目的とした無人航空機の飛行を行う場合は(法第132条の86第1項を除く)禁止規定を適用しないとしています。
(※法第132条の86第1項:アルコール・薬物の影響下での飛行)

①都道府県警察

②国もしくは地方公共団体またはこれらの者の依頼により捜索もしくは救助を行う者(特例適用者)

これらの飛行の際には、航空情報の発行手続きがあります。そのため管轄空港事務所への飛行日時、飛行範囲、最高飛行高度などの通知を行います。
また航空機の飛行の妨げとならないよう中止の判断や十分な距離を保った飛行が求められます。

なお、航空法の例外規定になっていますが「航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律」の規定は適用されます。従って例え過失であっても航空の危険を生じさせた場合は罰則があります。

また、飛行の目的が「災害等の報道取材やインフラ点検・保守など、緊急用務空域の指定の変更または解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行」に限り、国土交通大臣に飛行許可を申請するケースがあります。

制度が開始されてから2023年までに指定された例は次のとおりです。

2022年11月18日~11月19日
 令和4年公示第1号 栃木県日光市 林野火災

2023年3月9日~3月10日
 令和4年公示第2号、3号 福島県白河市、郡山市 林野火災

2023年4月25日~4月28日
 令和5年度緊急用務空域公示第1号 群馬県沼田市 林野火災

2023年4月25日~4月26日
 令和5年度緊急用務空域公示第2号 群馬県桐生市 林野火災

2023年11月2日~11月6日
 令和5年度緊急用務空域公示第3号 愛媛県大洲市 林野火災

2023年12月5日~12月6日
 令和5年度緊急用務空域公示第4号 愛媛県今治市 林野火災

以上のとおり、2023年まではすべて林野火災での禁止空域指定でした。

能登半島地震の緊急用務空域指定

2024年1月1日に発生した能登半島地震では、地震発生翌日の1月2日から1月14日まで、令和5年度緊急用務空域公示第5号から第9号に亘り対象空域を徐々に緩和しつつ指定が継続されました。(公示第7号は広島県江田島市の林野火災)
林野火災以外の緊急用務空域指定は過去に例のないことでした。
この地震においては、捜索・救助、物資輸送や通信中継などでドローンが活用されました。
国土交通省は指定の空域を徐々に緩和させていくと同時に、緊急用務空域内の飛行許可申請をDIPS2.0によることなく、電話またはメールで受付を行いました。

活動状況については、国土交通省がまとめた「ドローンの利活用促進・社会実装に向けた取組について・能登半島地震でのドローン活用について(国土交通省)」資料を参照してください。小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第19回)資料より引用しています。

無人航空機の飛行自粛要請

緊急用務空域の指定のほかに、「無人航空機の飛行自粛要請」が行われることがあります。例を挙げると、要人の式典出席などについて警察庁がドローンの飛行自粛を要請するものなどです。予告公表されます。国土交通省「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」のページにある【航空局からのお知らせ】を見ると要請の有無を確認できます
これは警察庁が飛行禁止区域を指定する小型無人機等飛行禁止法の措置とも違います。2022年9月の故安倍晋三国葬儀や2023年5月のG7広島サミットでは、小型無人機等飛行禁止法に基づく飛行禁止措置でした。

 

緊急用務空域で活動を行う防災ヘリ

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