ドローン飛行における風速確認、各高度帯における風向風速

ドローン飛行における風速確認、各高度帯における風向風速

1.ドローン飛行における風速確認についての明確化

ドローン飛行における風速確認については、2024年6月10日に改正された「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」で、記載内容が明確化されました。

飛行に必要な準備が整っていることの確認として、改正前は、「当該飛行に必要な気象情報を確認すること 具体的な例:風速が運用限界の範囲内であることの確認」であったものが、その後ろに「風速においては、離着陸場所の地上風及び飛行経路上の各高度帯における風向風速変動を確認すること」と、詳細に書き加えられたのです。

2.風速確認の重要性と具体的な対応策

一般的に上空の風は地表の風よりも強いとされています。
気象庁の公表資料でも「風は地面の摩擦を受けるため、一般的に上空では強く地表に近づくにつれて弱くなります。」との説明があります。

飛行前に、風速計で離陸場所の風速を測定することは多くの方が実施しているかと思います。加えて、予定している飛行高度帯での風速も事前に確認することが重要です。

例えば、株式会社ウェザーニューズが提供する「空の天気Ch.」では、飛行前に各高度帯の風向・風速を詳細に確認することが可能です。同社のニュースリリース(2024年4月4日)の一部を紹介します。

ウェザーニュースアプリで「空の天気Ch.」をリリース

<高度別の風向・風速と気温、下層雲の予測をマップ上で確認可能>

本日リリースした「空の天気Ch.」では、上空の高解像度な気象予測を日本全国どこでも見ることができます。ドローンの運航に重要となる上空100m付近を含む5つの高度(上空100m付近/1,500m付近/3,000m付近/5,700m付近/9,600m付近)の風向・風速と気温の予測がマップ上で確認できるほか、運航判断や空撮で気になる下層の雲の予測も見ることができます。マップは自由自在に拡大・縮小ができて、見たいポイントの予測を詳しく確認することが可能です。予測は1時間ごとに確認できるため、飛行予定時間の気象予測をチェックしたり、安全に飛行できるタイミングを判断したりするのに役立ちます。

<日本国内全地点対応 10分ごとの高度別ピンポイント予報で空の安全を支援>

また、低空域のより詳細なピンポイント予報も利用可能です(有料会員向け)。ドローンポートや空港など任意の地点で検索すると、その地点の上空150mまでを7段階(0m/20m/50m/70m/100m/120m/150m)に分けた高度別の風向・風速と気温の予報を10分ごとに表示します。また、風速に基づいたドローンの運航可否を「影響なし」「注意」「飛行不可」の3段階で、気温低下によるバッテリーへの影響を「影響なし」「注意」「警戒」の3段階で判定して表示しており、ドローンが安全に運航できるかがひと目でわかります。さらに地上付近の1時間ごとの天気、降水量、気温、風と10日先までの天気、気温、降水確率もご覧いただけます。パイロットは、操縦に必要な気象情報を把握することで、飛行予定日の検討や運航可否の判断、飛行高度やルートの見直しにお役立ていただけます。

引用元 株式会社ウェザーニューズ 2024.04.04 ニュースリリース

表示例

空の天気Ch.風向・風速を流線で予測
風向・風速を流線で予測
空の天気Ch.高度別ピンポイント予報
高度別ピンポイント予報(風向・風速)

これは特定のドローンポートだけではなく、日本国内のドローンを飛行させたい場所を地図上でプロットすれば、ドローンを飛行させる高度の予報風速を確認できます。風向も把握できます。

リリースの全文は以下URLからご確認いただけます(株式会社ウェザーニューズのサイトに遷移します)。
https://jp.weathernews.com/news/46633

なお、当事務所のウェブサイトでの掲載については株式会社ウェザーニューズ様の承諾を得ております。

3.航空法令における風速確認の規定

航空法とその関連法令では、ドローンの飛行前の風速確認が義務付けられています。どのような記載があるのか、航空法その他関連省令、規定を確認したいと思います。

航空法

(飛行の方法)

第百三十二条の八十六 無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。

(中略)

二 国土交通省令で定めるところにより、当該無人航空機が飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整つていることを確認した後において飛行させること

上記に記された「国土交通省令で定められるところにより」とは、同法施行規則の以下の箇所が該当します。

航空法施行規則

(飛行の方法)

第二百三十六条の七十七 法第百三十二条の八十六第一項第二号の規定により無人航空機を飛行させる者が確認しなければならない事項は、次に掲げるものとする。

一 当該無人航空機の状況

二 当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況

三 当該飛行に必要な気象情報

四 燃料の搭載量又はバッテリーの残量

五 リモートID機能の作動状況(第二百三十六条の六第二項各号に該当する飛行を行う場合を除く。)

また、飛行許可・承認の申請に対し国土交通省が審査を行うための審査要領が定められており、同様に次の記述があります。飛行前確認に加え、飛行中の風速についても記載があります。

無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)

4-3 無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制

 4-3-1 次に掲げる事項を遵守しながら無人航空機を飛行させることができる体制を構築すること。

 (1)第三者に対する危害を防止するため、原則として第三者の上空で無人航空機を飛行させないこと。

 (2)飛行前に、気象(仕様上設定された飛行可能な風速等)、機体の状況及び飛行経路について、安全に飛行できる状態であることを確認すること

 (3)取扱説明書等に記載された風速以上の突風が発生するなど、無人航空機を安全に飛行させることができなくなるような不測の事態が発生した場合には即時に飛行を中止すること

(以下略)

更に、冒頭で紹介しました「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」です。

無人航空機に係る規制の運用における解釈について

(2)飛行に必要な準備が整っていることを確認した後の飛行

 飛行前に機体の点検等を実施することで故障等による落下を防止するため、航空法第132条の86第1項第2号により、飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させることとしている。また、航空法施行規則第236条の77に定められた確認しなければならない事項とその具体的な例は次の通りである。

(中略)

当該飛行に必要な気象情報を確認すること

具体的な例:風速が運用限界の範囲内であることの確認

風速においては、離着陸場所の地上風及び飛行経路上の各高度帯における風向風速変動を確認すること

気温が運用限界の範囲内であることの確認

降雨量が運用限界の範囲内であることの確認

十分な視程が確保されていることの確認

4.ドローン飛行で「風速の事前確認」は義務

ドローンの飛行において、禁止されている飛行空域や飛行方法があることはご承知のとおりかと思います。そしてそれは一定の条件下において許可承認を得ることにより飛行できる、または許可承認を不要とする「例外」があります。
しかし、この風の確認は、ドローンの飛行では必ず守らなければならない例外のない義務です。
次の絵が必ず守らなければならない義務の一覧です。

遵守する飛行方法
出典:国土交通省ウェブサイト「無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法」より抜粋

「風速の確認」は、このうちの「飛行前確認」の一つです。先述の航空法施行規則第二百三十六条の七十七の「当該飛行に必要な気象情報」に風速が含まれます。

5.航空局標準マニュアルにおける風速確認の記載ぶり

また、飛行許可承認申請の際に提出する資料として飛行マニュアルがあります。国土交通省はサンプルとなる標準マニュアルを提示していますが、そのうち「航空局標準マニュアル01、02」で、飛行前と飛行中の風速確認については次のような記載となっています。

2-8 無人航空機を飛行させる者が遵守しなければならない事項

(2)飛行前に、気象、機体の状況及び飛行経路について、安全に飛行できる状態であること、飛行させる場所が緊急用務空域に指定されていないことを確認する。

(3)5m/s以上の突風が発生するなど、無人航空機を安全に飛行させることができなくなるような不測の事態が発生した場合には即時に飛行を中止する

3-1 無人航空機を飛行させる際の基本的な体制

(2)風速5m/s以上の状態では飛行させない

このように、飛行前の気象状況の確認と併せて、飛行中において5m/s以上の風が吹いた場合は、飛行を中止することが記載されています。

この航空局標準マニュアル01、02は、前述した審査要領や「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」とは記載ぶりに相違があります。

飛行前の確認として、審査要領では「気象(仕様上設定された飛行可能な風速等)~(中略)~を確認」、解釈文書では、「風速が運用限界の範囲内であることの確認」となっています。他方、標準マニュアルでは、「仕様」や「運用限界」について触れられていません。

また、飛行中の措置として、審査要領では、「取扱説明書等に記載された風速以上の突風~(中略)~が発生した場合には即時に飛行を中止すること。」とされています。これに対し標準マニュアルは、「5m/s以上」という数値基準が置かれています。

因みに、DJI社製の機体の場合は、運用限界について、次のようにユーザーマニュアルに記載されています。
DJI Mavic 3 「風速12 m/s超の時や、雪、雨、霧などの悪天候時には、飛行させないでください。」
同様に、他の機体の風速値の記載は以下のとおりです。
MATRICE 350 RTK 風速12 m/s超
Air 3 風速12 m/s
Mini 3 風速10.7m/s超
Avata 2 風速10.7m/s超

航空局標準マニュアル01と02は、安全を最優先した運用となっていると言えます。

因みに、他の標準マニュアル「航空局標準マニュアル(インフラ点検)」では、「風速5m/s以上の状態では飛行させない。」ではなく、「機体の耐風性能を上回る風速では飛行させない。」という文言が使用されています。

標準マニュアル01、02で示された風速5m/sを可視化するために、気象庁の資料を参考までお示しします。

ビューフォート風力階級表
出典:気象庁「気象観測ガイドブック」

6.実務における風速値の扱い

航空局標準マニュアル01、02を使用して飛行許可承認を取得している場合の飛行は、5m/sの風速値を守る必要があります。
他方、業務で飛行させるために必要な場合には、独自マニュアルの作成を検討することも視野に入りますが、その際は安全対策を十分に考慮したものにする必要があります。

風速を確認してドローンを飛行させることは、安全を守るために欠かせないプロセスです。操縦者の皆様が安全にドローンを運用できることを心より願っております。

ドローン飛行の風速確認

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