- 2023年4月8日
小型無人機等飛行禁止法によるドローン規制 - 行政書士さいれんじ事務所
重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(小型無人機等飛行禁止法)
まずはじめに、次の画像をご覧ください。
国会議事堂は機動隊の方が周辺警備にあたっておられますが、機動隊車両には「NO DRONE ZONE」の周知ステッカーが貼ってあります。
つまり警備の一環としては小型無人機等飛行禁止法違反に対する警備もあります。違反者は同法による罰則がありますのでご注意を。
(警視庁の了解を得て撮影及び本ウェブサイトに掲載。)
小型無人機等飛行禁止法の対象施設周辺の警備の例
航空法によるドローン許可を取得していても、ドローンを飛行させるためには、その他の法令等も遵守する必要があります。このページでは「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(以下「小型無人機等飛行禁止法」という。)」を見てまいります。
航空法と小型無人機等飛行禁止法とのドローン規制の違い
1.対象となるドローン
まず二つの法律において機体重量の取り扱い方が違います。
なお、航空法では「無人航空機」、小型無人機等飛行禁止法では「小型無人機等」という用語を使用していますが、用語の説明は後述します。
航空法
- 重量(機体本体とバッテリーの合計)が100グラム以上のものが規制の対象
小型無人機等飛行禁止法
- 100グラム未満のものも規制の対象
2.飛行禁止の場所
航空法は「飛行禁止空域」があります。小型無人機等飛行禁止法ではこれとは別に飛行禁止場所が定められています。
航空法
- 空港等の周辺の空域
- 緊急用務空域
- 地表又は水面から150m以上の高さの空域
- 人口集中地区の上空
小型無人機等飛行禁止法
対象施設の敷地・区域の上空(レッドゾーン)と周囲おおむね300mの上空(イエローゾーン)での飛行が禁止されており対象施設は以下のとおりです。
- 国の重要な施設等
イ)国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居 等
ロ)危機管理行政機関の庁舎
ハ)対象政党事務所 - 対象外国公館等
恒常的に指定された施設はありません。 - 対象防衛関係施設
- 対象空港
新千歳、成田国際、東京国際、中部国際、大阪国際、関西国際、福岡、那覇の各空港 - 対象原子力事業所
以上ですが、詳細は後述します。
この他、特別措置法で「大会会場等」及び「空港」が追加されたことがあります。具体的には「平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法」や「令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」です。
3.空港周辺地域の上空を飛行させる場合の小型無人機等飛行禁止法に基づく手続き
令和2年7月22日から、小型無人機等飛行禁止法に基づき上記8箇所の空港がドローンの飛行を禁止する空港に指定されました。
これによって航空法で空港等周辺の空域のドローン飛行許可を取得していても、小型無人機等飛行禁止法でこれらの空港の敷地、区域および周辺地域の上空の飛行が禁止されており、飛行させるには「同意」や「事前通報(通報書の提出)」が必要となっています。
可能な飛行(飛行に必要な同意も記載)
- 【レッドゾーン】対象空港の敷地または区域の上空
当該対象の空港の管理者またはその同意を得た者が行う飛行 - 【イエローゾーン】対象空港に係る対象施設周辺地域の上空
イ)当該対象の空港の管理者またはその同意を得た者が行う飛行
ロ)土地の所有者もしくは占有者(正当な権原を有する者に限る)またはその同意を得た者が行う飛行(当該土地の上空に限る)
ハ)国または地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
事前通報
- 事前通報先
対象の空港管理者、都道府県公安委員会(管轄する警察署長を経由)、管区海上保安部長(海域を含む対象施設周辺地域を飛行する場合)
次の空港は対象施設周辺地域が2つの都道府県公安委員会に跨るため、双方への通報です。
東京国際(羽田)空港:警視庁および神奈川県警察
大阪国際空港:大阪府警察および兵庫県警察 - 事前通報期限
飛行を開始する48時間前まで(災害その他やむを得ない場合を除く) - 通報書を提出
3では空港を特記しましたが、小型無人機等飛行禁止法で該当する対象施設の敷地・区域の上空(レッドゾーン)と周囲おおむね300mの上空(イエローゾーン)で飛行させるには同意や警察等への事前通報が必要です。これは航空法によるドローン飛行許可を取得していても必要な手続きです。
ここまでで、まず航空法とのドローン規制の違いについて記載してまいりました。次からは、小型無人機等飛行禁止法の全体についてみていきます。
小型無人機等飛行禁止法によるドローン規制の概要
この法律は対象無人航空機、飛行禁止場所等、航空法と異なる飛行禁止事項があります。
1.規制対象のドローンなどの小型無人機等とは
航空法と異なり、規制対象は小型無人機「等」であり人が飛行することができる気球なども含まれます。「小型無人機」の他に「特定航空用機器」というものが加わります。また、重量による除外はありません。
小型無人機
- 無人飛行機(ラジコン飛行機等)、無人滑空機、無人回転翼航空機(ドローン等)、無人飛行船 等
特定航空用機器
航空法第二条第一項に規定する航空機(※)以外の航空の用に供することができる機器であって、当該機器を用いて人が飛行することができるもの(高度又は進路を容易に変更することができるものとして国家公安委員会規則で定めるものに限る)。
(国家公安委員会規則で定める特定航空用機器)
- 操縦装置を有する気球
- ハンググライダー(原動機を有するものを含む)
- パラグライダー(原動機を有するものを含む)
- 回転翼の回転により生ずる力により地表又は水面から浮揚した状態で移動ができ、かつ、操縦装置を有する機器で、この機器を用いて人が飛行することができるもの(航空法第二条第一項に規定する航空機に該当するものを除く)
- 下方へ噴出する気体の圧力の反作用により地表又は水面から浮揚した状態で移動ができ、かつ、操縦装置を有する機器で、この機器を用いて人が飛行することができるもの
(※)航空法第二条第一項に規定する航空機
「航空機」とは、人が乗つて航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器をいう。
2.ドローンなど小型無人機等の飛行が禁止されている場所
- 後述する対象施設の敷地・区域の上空(レッドゾーン)
- 対象施設の周囲おおむね300mの上空(イエローゾーン)
※「おおむね」は周辺地域が周囲300mの画一的なものではないことを意味します。対象施設ごとに官報告示されています。例えば国家公安委員会(警察庁)の施設の敷地と施設周辺地域は以下のとおりです。
3.具体的な対象施設
(1)国の重要な施設等
- 国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居等
具体的には、国会議事堂、衆議院第一議員会館、衆議院第二議員会館、衆議院議長公邸、衆議院第二別館、憲政記念館、国立国会図書館、参議院議員会館、参議院第二別館、参議院議長公邸、内閣総理大臣官邸、内閣総理大臣公邸、内閣官房長官公邸、皇居、赤坂御用地、最高裁判所庁舎 - 危機管理行政機関の庁舎
こちらも具体的には、内閣官房、内閣府、国家公安委員会(警察庁)、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、デジタル庁 - 対象政党事務所として指定された施設
公明党本部、自由民主党本部、日本共産党中央委員会
(2)対象外国公館等
- 恒常的に指定された施設はありません。
(3)対象防衛関係施設として指定された施設
- 自衛隊施設( 参考:防衛省ウェブサイト「小型無人機等飛行禁止法関係」≫「自衛隊の対象防衛関係施設の一覧」
(https://www.mod.go.jp/j/presiding/law/drone/list.html)) - 米軍施設(参考:防衛省ウェブサイト「小型無人機等飛行禁止法関係」≫「在日米軍の対象防衛関係施設の一覧」
(https://www.mod.go.jp/j/presiding/law/drone/list_zaibeigun.html))
(4)対象空港として指定された施設
- 新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、大阪国際空港、関西国際空港、福岡空港、那覇空港
(5)対象原子力事業所として指定された施設
- 泊、東通原子力、女川原子力、福島第一原子力、福島第二原子力、柏崎刈羽原子力、浜岡原子力、志賀原子力、美浜、高浜、大飯、島根原子力、伊方、玄海原子力、川内原子力、東海第二、敦賀 各発電所、高速増殖原型炉もんじゅ、新型転換炉原型炉ふげん、核燃料サイクル工学研究所、大洗研究所、再処理事業所
(6)その他特別措置法で指定する施設
- 特別措置法で「大会会場等」および「空港」が特別措置法で追加されたことがあります。具体的には「平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法」や「令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」です。
また、外国要人の来日などで一時的に対象施設が追加されることもあります。
4.禁止の例外
この法律で「何人も、対象施設周辺地域の上空において、小型無人機等の飛行を行ってはならない」とされています。しかしながら禁止の例外があり、以下の場合は適用しないことになります。
- 対象施設の管理者又はその同意を得た者が当該対象施設に係る対象施設周辺地域の上空において行う飛行
- 土地の所有者もしくは占有者(正当な権原を有する者に限る)又はその同意を得た者が当該土地の上空において行う飛行
- 国または地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
ただし対象の防衛関係施設及び空港の敷地又は区域の上空(レッドゾーン)においては、
- 土地の所有者若しくは占有者が当該土地の上空において行う飛行
- 国又は地方公共団体の業務を実施するために行う飛行
であっても、当該施設の管理者の同意を得ることが必要です。
5.禁止の例外に該当する場合の通報手続き
◆都道府県公安委員会等への通報
施設管理者の同意を得て、対象施設及びその周囲おおむね300mの周辺地域の上空で小型無人機等を飛行させる場合、都道府県公安委員会等への通報が必要となります。
通報方法
- 飛行を行う48時間前までに、対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会に通報書(飛行区域を示す地図を添付)を提出
- 皇居、赤坂御用地、仙洞仮御所の対象施設周辺地域を飛行させる場合、上記に加えて対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して皇宮警察本部長にも通報書を提出
対象施設管理者の同意を得て飛行する場合の通報における追加書面
- 対象施設管理者等から交付された同意を証明する書面の写し
- 国または地方公共団体の委託事業者の場合、委託を受けて飛行を行う証明書類の写し
機体の提示
- 警察署で機体等を提示します。提示が困難な場合は機体等の写真を提示します。
その他
- 同一の都道府県内の複数の警察署に管轄がまたがる場合は、いずれかの警察署経由で通報
- 2以上の都道府県にまたがる場合は、全ての都道府県公安委員会に通報
- 災害その他やむを得ない場合、飛行の直前までに口頭の通報で足りることになっていますが、同意を通報に先立って得る必要があります。
◆通報先の追加
都道府県公安委員会等への通報に加えて、以下の場合は更に通報を行う必要があります。
- 対象施設周辺地域が海域を含む場合
管区海上保安本部長への通報も必要 - 対象防衛関係施設の対象施設周辺地域の場合
当該防衛関係施設管理者への通報も必要 - 対象空港の対象施設周辺地域の場合
当該空港施設管理者への通報も必要
6.小型無人機等飛行禁止法違反に対する措置・罰則
- 警察官等は、同法の規定に違反して小型無人機等の飛行を行う者に対し、機器の退去その他の必要な措置をとることを命ずることができます。
- また、警察官等は、命ぜられた者が当該措置をとらないときなど、一定の場合には当該無人航空機等の飛行の妨害、飛行に係る機器の破損その他必要な措置をとることができます。
- 次の者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
同法の規定に違反して対象施設の敷地・区域の上空(レッドゾーン)で小型無人機等の飛行を行った者
同法第11条第1項に基づく警察官等の命令に違反した者